008. 病院における非常用電源

病院の自家発電装置

病院における非常用電源は最後の砦

病院における非常用電源の重要性は、まさに「人命を左右する」と言っても過言ではありません。なぜなら、病院は常に多くの患者さんの命を預かっている場所だからです。想像してみてください。もし病院で大規模な停電が発生したらどうなるでしょうか?

  • 手術中に(オペ室内の)電気が止まれば、患者さんの命に直結します。
  • 集中治療室(ICU)で生命維持装置が停止すれば、容態が急変してしまうかもしれません。
  • 新生児集中治療室(NICU)では、小さな命が危険にさらされます。
  • 人工呼吸器を使用している患者さんは、呼吸困難に陥ってしまうでしょう。
  • 透析患者さんは、治療を継続できなくなります。

このように、病院における停電は、医療現場に大混乱をもたらし、最悪の場合、多くの命が失われる事態にもなりかねません。最近では電気設備の不具合による断続的な停電が報告されました。(2024年7月23日)

非常用電源は、このような最悪の事態を回避するための最後の砦なのです。

常用自家発電設備と非常用自家発電設備

常用自家発電設備と非常用自家発電設備は、どちらも自家発電を行うための設備ですが、その目的、運転時間、管理方法などに違いがあります。

常用自家発電設備非常用自家発電設備
目的通常時の電力供給、電力コスト削減など災害時や停電時など、緊急時の電力確保
運転時間長時間連続運転短時間の運転
管理・点検頻繁な運転を伴うため、定期的な点検やメンテナンスが必要緊急時に確実に動作する必要があるため、法令に基づいた定期的な点検や負荷試験が義務付けられている

更に非常用自家発電設備は2種類

消防用設備の非常電源位置付け図

消防用設備の非常電源位置付け図(東京消防庁より)

点検基準(有負荷点検と無負荷点検)の改正

点検基準の負荷運転による運転性能確認が困難な場合がある問題を解消するために、平成30年6月、次の4点について改正が行われました。

  • 負荷運転に代えて行うことができる点検方法として、内部観察等を追加
  • 負荷運転及び内部観察等の点検周期を6年に1回に延長
  • 原動機にガスタービンを用いる自家発電設備の負荷運転は不要
  • 換気性能点検は負荷運転時ではなく、無負荷運転時等に実施するように変更

病院における医療機器用蓄電池レムリアの有効性

自家発電装置は、停電後の長時間にわたる病院全体の電力維持に貢献し、医療機器用蓄電池は、停電直後の瞬時かつ個別の電力供給を担うというように、両者は相互補完的な関係にあります。
自家発電装置が起動するまでの間、医療機器用蓄電池が重要な医療機器の電力を維持し、自家発電装置が起動後は、病院全体の電力を維持するというように組み合わせることで、より強固な電力供給体制を構築できます。